SONY GPS-CS1K
ソニーから、デジタルカメラと連携することに特化した、GPSデータロガー「GPS-CS1K」が新発売となったので、早々に筆者も購入してみた。ソニーは、過去にも「gTrex」シリーズという、ソニー製GPS受信機によるデジタルカメラ連携に特化したパッケージを販売していたのでが、gTrexシリーズはバージョン2を最後に製造中止となってしまい、Navin'Youシリーズと共に市場から消えてしまった。
今回、筆者が購入したGPS-CS1Kは、 そのgTrexシリーズの実質的な後継モデルと言えるのだが、過去のgTrexシリーズで用いられていたソニー製GPS受信機は、GPSデータロガーとし ても機能するのはもちろん、USB接続による単独のGPS受信機としてもモードを切り替えることで機能したのだが、残念ながらGPS-CS1Kは、GPSデータロガーに特化しており、USB接続型のGPS受信機としての機能は持っていない。
GPS-CS1Kは、単三アルカリ電池一本で動作を行う。これは、過去のソニー製GPS受信機「IPS-8000」と同様なのだが、稼働時間は短く連続使用の場合には、予備の電池を用意しておいた方が良い。とは言え、単三アルカリ電池であれば、何処でも購入できるというメリットはある。PCとの接続は、USB接続によって行うのだが、GPS-CS1KをUSBでPCへ接続すると、GPS-CS1Kはマスストレージ機能をサポートしており、USBフラッシュメモリとして振る舞い、GPSログデータを、そのままエクスプローラでドラッグ&コピー可能なので、マスストレージ機能を持ったデジタルカメラと同様に使い勝手が良い。
GPS-CS1K側へ装備されているのは、ミニUSBコネクタで、一応コネクタのカバーは付いているが、防滴構造ではないので雨天時での使用は出来ないと考えた方がよいだろう。これは、電池ケース部分の蓋の構造も同様だ。
GPS-CS1Kの電源スイッチをオンにすると、測位を開始しはじめると同時に、内蔵フラッシュメモリへ測位データを記録しはじめる。測位状態は、LEDによる点滅表示で把握することができる。記録データのフォーマットは、NMEAデータそのものであり、この点は便利である。ちなみに、GPS-CS1Kでのデータ記録間隔は15秒間隔の固定で、これは設定によって5~1秒間隔などへの対応もして欲しかったところだ。
GPS-CS1Kは、ソニー製のデジタルカメラであるサイバーショット・シリーズ用のオプションという設定であるが、ソニー製デジタルカメラへ直結できる訳ではなく、撮影した写真画像に、専用ツールで後処理によってGPS-CS1Kで記録されたGPSの位置データを編集書き込みする。従って、他社製のデジタルカメラで撮影された写真画像であっても、DCFファイル形式とExifデータ構造をサポートしていれば、他社製のデジタルカメラで撮影された写真画像へのExif-GPSフィールドへの位置情報を書き込むことが可能だ。
従って、国内製のデジカメ内蔵の携帯電話で撮影された画像なども利用可能なのだが、Nokiaをはじめとする海外製携帯電話やWindows Mobileなどの海外製スマートフォンなどでは、DCFやExifに非対応なので、これらの写真画像ではGPS-CS1K同梱のアプリケーションが対応できない場合もある。
これらの仕様は、過去のgTrexと全く同じで、GPS-CS1Kを使用する場合は、予めデジタルカメラの内蔵時計を、GPS-CS1Kの時計(すなわちGPS時計)の時間と、キャリブレーションをとっておかないと、撮影した時間をキーに撮影画像とGPSデータを同期させるので、実際の撮影場所と違った位置情報が書き込まれてしまう。
さて、GPS-CS1Kの受信感度であるが、使用されているGPSエンジンは、6月に筆者が購入してレポートした、ソニー製のBluetooth型GPS受信機「VGP-BGU1」と同じ、ソニー製の「CXD2951GA-4」が搭載されている。正直なところ、高感度の代名詞となったSiRF Star IIIを搭載したGPS受信機と比べると、かなり感度的に劣っていると言わざるをえない。また、同じCXD2951GA-4を搭載しているBluetooth型GPS受信機VGP-BGU1よりも、明らかに感度が悪く初期測位速度も遅い。
これは、GPS-CS1Kに搭載されているセラミックパッチ型GPSアンテナの性能が悪い(恐らく超小型のキャラメル型セラミックパッチGPSアンテナを搭載してる)のか、あるいは単三電池一本で動作を行っているため、十分なダイナミックレンジをLNA(ローノイズ高周波プリアンプ)が発揮できていないのか不明だが、一つ言えることはデザイン的な欠陥が大きく影響している。
GPS-CS1Kのデザインは、三角柱を基本にしており見た目は斬新でスタイリッシュな感じを受ける。しかし、問題は三角柱の一側面にGPSアンテナを装備しているので、付属のストラップを兼ねたプラスチック製帷子で、ベルトやバッグへGPS-CS1Kを装着した場合、どうしても三角柱であるため、何処かの平面側が、体やバッグ側と密着する。その密着する側がGPSアンテナを装備した面となると、当然ながらGPS衛星を捕捉できなくなってしまうのだ。
また、帷子で GPS-CS1Kをベルトやバッグへ装着した場合、当然ながらGPSアンテナは天空を向かずに側面を向いてしまうことになる。しかも、三角柱という筐体であるため、GPSアンテナ側の面が、体側へ向いてしまう場合が多い。高感度なSiRF Star IIIであれば、このような状態でも測位を行うことができるが、感度的にSiRF Star IIIよりも劣るCXD2951GA-4では、測位を安定して行うことは難しいだろう。
これはソニーのGPS製品全般(初期のIPSシリーズは違うが)に言える事だが、デザイン優先で製品を作る事が多く、性能を優先せずデザインを優先してしまった結果、使い勝手と性能が著しくスポイルされた製品となってしまい、結果的には使えない製品となってしまう。まさにGPS-CS1Kが、このデザイン優先で機能がまともに動作できない代名詞の最たる製品だと思う。
是非、GPS-CS1Kの次のモデルでは、試作機段階でデザイナーに実機を持たせ、稼働試験をすると共に、エンジニアはGPS受信機の動作原理やアンテナの理論をデザイナーへレクチャーしてもらい、実際に使える製品を市場へ投入して欲しいと思う。デザインと技術を両立した製品を市場へ提供してこそ、過去の「技術のソニー」というブランドイメージが蘇るのだと思うのは、筆者だけだろうか。
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コメント
こんにちは。
楽しく拝見させていただきました。
こちらに記載されているソニー製のGPSを全て主有している者です。(苦笑)
文章の通り全く使えないGPSに嫌気がさして解決策がないか検索した所こちらのHPに辿り着きました。
大変参考になりました。
記事を読ませていただき、コメットDL/3ことDG-100の購入を検討しております。
使えないGPSがいつか日の目を見るように祈りつつ最新機種を購入します。(笑)
これからも読ませていただきます。
ありがとうございました。
投稿: ぱぱ883 | 2008年4月22日 03:54
ぱぱ883さん、こんにちは、
ソニーも、早めにディスコンして、もっと実用的な感度を持った後継機種を販売して欲しいものですが、国内で売れないので、海外へ展開したようですね。
相当の数が在庫になっているんでしょうけど、ソニー・ブランドのプライドを捨てているとしか思えません。困ったもんです。
>記事を読ませていただき、コメットDL/3ことDG-100の購入を検討しております。
単三乾電池が使用できて、感度も良いので、大きささえ気にならなければ、お勧めです。
デジカメへのジオタグ書き込みが主な用途でなくて、GPS受信機として活用することができるロガーとしては、他の機種もリチウム充電池対応の小型なモデルも多いので、選択肢が多くてモデル選びで悩む楽しい状況です。 (笑)
また、購入されましたら、使用感などコメントいただければ幸いです。今後とも、よろしくお願いします。
投稿: 清水 隆夫 | 2008年4月24日 15:27