Fusion Garage joojoo
昨日の梅雨を思わせる様な雨模様の日から一転、真夏の様な日差しと暑さ(実際、真夏日だったらしい)の都内へ出かけてきた。出かけた先は、六本木のグランドハイアット東京で開催された、新製品の説明会だ。新製品の名前は「joojoo」、シンガポールのFusion Garage社が開発した、ピュア・タブレット・タイプのガジェットで、筆者も説明会に招待されたために、取材をしてきた。「joojoo」と言う変わった名前の由来は、西アフリカ地方で「魔法の力」を意味する、「juju」(ジュジュと発音する)という言葉から名付けられたと言う。
この「魔法」というワード(単語)は、Apple社製タブレットである「iPad」の発表の際に、スティーブ・ジョブスCEOが「iPad」の操作体感を表す言葉として多用していたのを思い出す。同様に、iPadと非常によく似たスタイルの「joojoo」(こちらもジュジュと発音)を表して、Fusion Garage社のCEOチャンドラセカル・ラサクリシュナン(Chandrasekar Rathakrishnan)氏が自らの商品説明で多用していた。どうやら、マルチ・タッチによる操作が可能なタブレット型のガジェット・デバイスは、「魔法」というキーワードが似合う様だ。
撮影ポジションが悪く、Fusion Garage社のCEOチャンドラセカル氏の操作による「joojoo」のデモンストレーションだったのだが、通訳の女性がメインになってしまった(決して意識的に通訳女史を撮影した訳ではないのだが・・・)。チャンドラセカルCEOの操作では、メイン・メニューから、Googleのトップページを開いたところだが、「joojoo」OS(LinuxをベースにしたオリジナルOS)から、同じくオリジナル開発のブラウザ(操作した感じでは、恐らくWebkitベースだと思われる)が起動した状態が、トップメニューとなっている様だ。
ブラウザの動作は、キビキビとしており、画面のスクロールやページ切り替えなども、かなりハイスペックのPCで、ブラウザを操作しているのと遜色なく動く。「joojoo」の搭載しているCPUは、Intel Atomプロセッサで筆者がチャンドラセカルCEOへ質問したところ、N270(クロック1.6GHz)とのこと。また、グラフィックはnVIDIA ION(GeForce 9400M)とのことで、標準的なNettBook(Intel製GPU)よりも、ことグラフィックスに関してはずっと強力だ。実際に操作してみても、タッチ操作にもたつきは皆無だし、全画面表示のHD動画も、nVIDIA IONの動画再生支援機能により、非常に滑らかな再生が可能だった。
上に掲載した写真は、筆者のiPod touchを「joojoo」の上に重ねた状態で撮影した写真だ。「joojoo」の大きさの目安になると思うが、ディスプレイは12.1インチのワイド型LCDで、解像度は1366ドット X 768ドットなので、フルワイドのXGAだ。iPadの9.7インチXGA(1024ドット X 768ドット)に比べると、スクリーンがワイドになっている分だけ大きさも大きくなっている。LCDは、光沢液晶でかなり鮮やかな発色をしていたし、視野角も広かった。IPS液晶が搭載されてるのかどうかは、質問し忘れてしまったので不明だが、綺麗な表示だった。
「joojoo」に搭載されているタッチパネルは、静電タイプのタッチパネルなので、これもiPod tacchi/iPhone/iPadと同じだ。当然ながらマルチタッチに対応しているのだが、タッチ操作の方法は、iPod tacchi/iPhone/iPadと異なっていた。特に二本指による操作は、全く違っているので、Apple社製のタッチ・オペレーションOSに慣れてしまっていると、違和感を感じるだろう。一例をあげると、Webページの上下スクロールは、必ず二本の指でないとスクロールを行えない。これは、チャンドラセカルCEOによると、「joojoo」に搭載しているWebブラウザは、Flashプレーヤ(10.1らしい)によるゲームなどの操作を行う場合に都合が良いからだと話していた。
「joojoo」の細部を見てみると、全体のデザインはiPadに良く似てはいるのだが、細部は大きく違っている。裏面は、一見するとアルミ製に見えるシャンパン・ゴールド(カラー・バリエーションは無いとのこと)だが、実際にはプラスチック製だ。また、パワーのあるGPUを搭載しているので、放熱用のスリットもある。裏面のボディと前面パネルの部分は、ビス止めとなっているので、iPadと違って容易に分解も可能な様に見える。とは言え、内蔵のリチウム・ポリマー・バッテリーの交換は出来ず、これはiPadと同じだ。
「joojoo」の重量は、1.1Kgと見た目よりもかなり重い。iPadの倍近い重量で、重さに関しては一般的なNetBookと同程度となっている。おそらく、重量の殆どを占めるのは、内蔵リチウム充電池だと思われる。公称では、無線LAN(Wi-Fi、IEEE802.11b/g対応)を使用した状態で、連続(最大)5時間の稼働が可能だという。先に掲載した、筆者のiPod touchとの比較写真で、「joojoo」の画面の右上にバッテリーの警告が表示されているのだが、午前中からのデモで連続稼働していたのだろうが、電池容量残り10%と表示されていた。
「joojoo」のI/Oインターフェースは非常にシンプルで、無線LANとBluetooth 2.1 + EDRのワイヤレス系インターフェースと、USB 2.0のポートが一個だけだ。他にオーディオ入出力の3.5mmφジャックが、マイクとヘッドフォンの二個、充電端子があるだけで、iPadのようなドック・コネクタによる拡張は行えない。ビデオ出力も無いので、唯一のUSB 2.0ポートだけが拡張コネクタとなる。USBポートは、開閉型のカバーに覆われており、使用時にはカバーを開けて使用する。USBポートへは、USB接続型のキーボードやマウス、そしてUSB接続によるストレージ・デバイスが可能とのこと。
筆者としては、SDメモリ・カード・スロットが欲しかったところだが、チャンドラセカルCEOへ質問したところ、搭載の予定は無いし、内蔵のSSD(4GB)、メモリ(1GB)共に拡張はできないとのこと。また、他のOS(フルスペックのLinuxや、Android、Chrome OSなど)のサポートも一切無いと断言していた。デジタルカメラで撮影した画像の表示などには、iPadと同じ様にUSB接続型のメモリ・カード・リーダを接続すれば可能のようで、同様に動画や音楽なども外部ストレージに収録されたファイルの再生や閲覧は可能なようだ。
「joojoo」には、iPadには無いWebカメラ(イン・カメラ)が内蔵されており、ビデオチャットなどのサービスにも対応している。これは、欧米のマーケットではビデオ・チャットや通話のニーズが多いので、iPadとの差別化という意味で、欧米のマーケットでは受けるだろう。日本のマーケットでは、あまり重要視されているとは言い難く、むしろビデオ撮影用のアウト・カメラの方がニーズが多い様に思う。センサーとしては、周囲の明るさを感知して、ディスプレイの輝度をコントロールする外光センサー、そして画面の縦(ポートレート)、横(ランドスケープ)を切り替えるモーション・センサーが搭載されている。
このポートレート、ランドスケープの切り替えに関しては、iPod tacchi/iPhone/iPadの様な画面表示の切り替えアニメーションは無く、消えて再表示するという切り替え動作のみだが、「joojoo」のフレームに表示されているロゴが、ランドスケープ(横)表示時には右下へ表示され、ポートレート(縦)表示時には、左上の表示に切り替わるという凝ったLED表示となっていた。この他、電源ボタン自体が、LEDによって発光して、ローバッテリーとなると、白からオレンジの点滅に変わる。
この電源ボタンが、「joojoo」に搭載されている唯一のボタンで、操作のすべてはタッチパネルより行う。他に、3.5mmφオーディオ・ポートと電源ジャックのそばにリセット・スイッチと思われるピンホールがあるのを確認しただけだ。
今回、二台の「joojoo」が実際に操作可能な状態だったのだが、一台は電池切れや、会場のWi-Fiが不安定だったりして、細かな点までは調べる時間が足りなかった。Linuxベースの独自OSに、搭載しているアプリケーションは、Webブラウザだけというタブレット型Webブラウザ・アプライアンスの「joojoo」であるが、一切、アプリケーションのインストールが行えないという(良くも悪くも)割り切った製品は、PCでWebブラウザしか使わないユーザであれば、電源ON後僅か9秒で起動するWebブラウザ・マシンが、価格も49,999円とNetBook並に安価なので、タッチ操作によるブラウンジングという快適さが得られるだろう。
反面、PCのローカル・アプリケーション(ゲームやOfficeなど)を多用しているPCユーザには、機能不足な製品と映るだろう。その辺りは、より多機能なApple iPadや、今後(6月1日から開催されるCOMPUTEX TAIPEI 2010で)多くのメーカから発売されるだろう、タブレット型デバイスとの比較をしてみた方が良いと思う。また、今回デモで使われた「joojoo」は、ブラウザでの日本語の表示はできていた(明朝フォントだったが)が、日本語入力のIMEは装備されておらず、メニューなども英文のままだった。これは、6月1日より日本向けに出荷されるモデルに関しては、日本語入力や(スクリーン)キーボードが搭載されるとのこと。
実際、筆者がブラウザを操作した際、表示フォントが小さかったので、拡大表示を行おうとして、ピンチやらダブル・タッチなどを行ったのだが、一切ズーム操作は行えなかったので、ズームはできないのかと尋ねたところ、サポートしていないという答えだった。時間が無かったので、テキストのコピー&ペーストや、ファイルの保存、PDFの表示などもテストできなかったが、正直なところまだまだブラウザは荒削りな印象もあった。しかし、今後「joojoo」のOSやブラウザ・ソフトも、今後改良を行うとのことだったので、今後に期待したいところだ。
日本で発売が開始(実際には、Fusion Garage社のWebサイトでの直販なので、シンガポールからの出荷となり、送料が2,699加算される。また、購入ページも含めサイトは現時点では全て英文だ。)された「joojoo」だが、既に欧米では販売が開始されており、実際のユーザのレポートなども、インターネット上で見つけることができる。WebブラウザをOSとして使用するというコンセプトは、Google Chrome OSと同じなので、今後「joojoo」のライバルとしては、Apple iPadに加えてGoogle Chrome OS搭載タブレットや、Android搭載タブレットなどが、同じ価格帯で戦うことになるだろうから、5万円前後のタブレット・ガジェットの百花繚乱となるので、「joojoo」も頑張ってシェアを広げて欲しいと思う。
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コメント
5万は安い・・・けど、アプリインストール不可ってのは無理かも。
家内モバイルなら良いけど電池交換不可?
コネクタ無しで充電も標準装備欲しいかも。
投稿: KITA | 2010年5月22日 08:05
KITAさん、まいどです。
>5万は安い・・・けど、アプリインストール不可ってのは無理かも。
ハードウェアのスペックは、とっても強力で魅力的なんですよね。しかし、アプリを一切、入れられないというのが、このjoojooの購入者の分かれ目だと思います。
会場では、CEOが盛んにオープンだと連呼していましたが、ユーザがアプリを作っても(例えばJavaとかFlash、JavaScriptで)、それを本体にインストールできないので、ネット経由で自分のサーバにいれとかないと使えないので・・・
折角、オープンなLinuxを採用していても、アプリが入れられないのでは、Linuxを使っていても、クローズドな日本の高機能携帯(ガラパゴス携帯とも言いますが)と同じですよね(実際には、ガラパゴス携帯は少なくともJavaアプリは保存できますから、まだ少しオープンかも)。
ただ、SSDのモジュールが改装可能ならば、16G~32G程度のモジュールと入れ替えてしまい、Ubuntu NetBook Remixなんかを入れると、面白く遊べるのですけど・・・
投稿: 清水 隆夫 | 2010年5月22日 12:09